筒井康隆氏についての…

筒井康隆さんについての情報を中心としたブログです

時をかける少女』(No.30)(SFベストセラーズ版)

ドラマ『タイム・トラベラー』の人気により、放映直後から筒井さんのもとにも原作である『時をかける少女』についての問い合わせが相次ぎました。『狂気の沙汰も金次第』「手紙」にはこうあります。

「放映された時のタイトルは『タイム・トラベラー』だったが、「時をかける少女より」という但し書きがついていたため、手紙がいっぱい来はじめた。 「時をかける少女は、どこで買えますか」 「本屋にありません。あなたのを送ってください」 「あなたの持ってるのを一冊ください」 手紙はたちまち百通を越した。NHKには何千通か来たという。あわてて出版社に連絡し、軽装版にして再刊してもらった」

函入・上製本の<ジュニアSFシリーズ>シリーズ全10巻は当時既に在庫がほとんど無かったため、シリーズはすべてそのままB6・並製本の<SFベストセラーズ>シリーズとして生まれ変わることとなりました(装幀は長尾みのる氏に変更されたものの、谷俊彦氏の挿絵はそのまま、字組もそのままという、かなり急ピッチな編集作業だったことがうかがえます)。やや新書より大きめで読みやすい軽装版だったため、『時をかける少女』を筆頭に小・中学生に大いに売れたようです。というのも滅多に本を読むことがなかった私の姉もこの<SFベストセラーズ>版『時かけ』を持っており(一緒に眉村卓なぞの転校生』もありました)、それが私の初めて読んだ筒井作品になったのです。
この<SFベストセラーズ>シリーズ版の初版発行日ははっきりとしていません(1972年前半であることは確実)。各作家の作品リスト、あるいは古書店目録にも「発行日不明。奥付に記載なし」とあることが多いです。他の作家の著作リストには5月発行としているものもありますが、これは翌年の『出版年鑑73』に「5月発行」と記されているからではないかと推測されます。しかし「奥付に発行日記載なし」といっても初期のものの奥付部分右隅には5桁〜8桁の、「発行日をあらわしているのではないか」と思われる数字が記されています。私の手元にある<SFベストセラーズ>版『時かけ』では「72317」が最も小さく(古く?)、「72505」が多く、中には「72101220」「74040114」というのもありました。これはそのまま1972.3.17発行、同年5.5発行、同年10.12 20刷発行、1974.4.1 14刷発行と読めなくもありません(最後の14刷は矛盾しているように見えますが、これは鶴書房になってからのものにあった数字で、鶴書房時代で14刷と解釈もできます)。これからすると1972.3.17発行という仮説も成り立ちます(『タイム・トラベラー』の反響後、急いで軽装版にするとしても、3月発行あたりが最速だったのでは…と思います)。はっきりと記載されていない限り、初版発行日不明のままは変わることはないでしょうが、いつか当時の状況を知る方に訊ねてみたい気もします。
この<SFベストセラーズ>版『時かけ』は私が把握しているだけでもカバー3種、本体2種、帯5(+1)種と、コレクター泣かせのアイテムになっています。次回からはそのヴァリエーションを出来るだけ紹介していきます。