筒井康隆氏についての…

筒井康隆さんについての情報を中心としたブログです

井上ひさしさん死去。

 朝、携帯電話に流れてきたニュースで知り、思わず起き上がってしまいました。言葉になりません。
 最初の出会いは「ひょっこりひょうたん島」でしょうが、意識したのは『ブンとフン』でした。頁にのりしろがついている小説なんてはじめてだったので、うひょうひょと喜び、黄色い背表紙の文庫群を読み続けました。『吉里吉里人』が出たときはその分厚さが嬉しくて嬉しくてずっと抱えて読んでいました。もうその頃は単行本が出たら読むという、大事な作家になっていました。
 「イーハトーボの劇列車」と「きらめく星座」も忘れられません。劇も戯曲も大好きでした。「イーハトーボの劇列車」は最後に祖母とふたりで一緒に見た芝居でした。「きらめく星座」を見てから、賢治の「星めぐりの歌」をそらで歌えるようになったのは井上さんのお陰です。「風景はなみだにゆすれ」も講談社歴史文学館『四千万歩の男 蝦夷編』の「あとがき」も大好きでした。賢治や忠敬に対する真っすぐな敬意を素直にあらわすその文章は井上ひさしさんの真摯な生き方そのものだったように思います。
 筒井さんの『バブリング創世記』(徳間文庫)解説はその一節一節にうなずきながら読みました。第一回パスカル文学新人賞選考会当日、選考会前にパソコン通信上で選考をほとんど書かれていなかった井上さんでしたが、当日の各作品への評価は的確で、不安でいっぱいだった私に改めて文学に対する姿勢を示してくれました。「括弧の恋」も心に残る短篇です。当時パソコン通信で本の会議室のようなものがあり、そこで「括弧の恋」をとりあげたら、その週の筒井さんの「本の森の狩人」が「括弧の恋」で飛び上がって喜んだことを思い出します。「一分ノ一」はどうなっていたんだろう。きちんと追いかけていなかったことが悔やまれます。
 本がいっぱいでいっぱいで部屋を眺め回して溜息をつく夜は『本の運命』を思い起こすことにしていました。「むずかしいことをやさしく やさしいことをふかく ふかいことをゆかいに ゆかいなことをまじめに書くこと」。色紙に書かれていた井上さんの言葉を、そのままだった井上さんの生き方を心に刻んで、これからも言葉をだいじに、本を大事に読んで行こうと思います。
 ありがとうございました。ご冥福をお祈りします。