3/8(土)、静岡県掛川市にある資生堂企業資料館に行ってきました。
ことの起こりは1月下旬に遡ります。神保町で貰った古書店目録をパラパラ眺めていたら、筒井さん関連がまとまって出ている頁がありました。盛光社版『時をかける少女』、毎日新聞社『緑魔の町』など珍しいものもあったので、うひょひょと思いながら目を走らせていると、最後にこれは!という代物が。
「最初の混線」は平石滋さん作成作品リストで初出誌不明になっているうちの一篇でした。単行本初収録は『発作的作品群』(1971.7.10)、時期もぴったりです。
早速、平石さんに連絡、古書店に注文を出し、抽選結果が出る即売会初日を待つことにしました。もちろんその間に国会図書館等に所蔵がないか調べましたが成果はなし(もともと星新一さんの公式サイト内、高井信さんによる星さんの初出リストをチェックしたときに、筒井さんが書いておられるかも知れない雑誌のひとつとして「資生堂ホールセーラー」が挙がっていたので、あくまで再確認だったのですが)。
2月初旬、即売会初日、いそいそと電話で抽選結果の確認を取りました。翌日に直接取りに行こうと思って休みも確保、準備は万端でした。ところが返ってきた答えは…。
「残念ながら当たってないですねえ」
頭の中は真っ白。迂闊にも当たるだろうと勝手に思い込んでいたのです。何てこった。平石さんへはお詫びしましたが、なぜもっと協力を仰いで複数注文してもらわなかったのかと後悔ばかり。確認違いかもと翌日再度問い合わせをしましたが(迷惑)、結果は同じ(当たり前)です。
翌日、一縷の望みを抱いて、資生堂に問い合わせのメールを書きました。資料館というのが静岡にあり、もしかしたらという思いでした。
数日後、携帯に一本の着信がありました。資生堂コールセンターからで「資生堂ホールセーラー」1971年度分は資料館に所蔵があるが、複写は不可、筆写になるということでした。素早い丁寧な対応に感動し、訪問の際は改めて資料館のほうに連絡すると返事、感謝の意を伝えました(やったあと心でガッツポーズ)。
それからしばらくして一通のゆうメールが届きました。差出先は件の古書店。不思議に思いながら封を開けると、そこには「資生堂ホールセーラー」が…。
あの当たってないという返答は何だったんでしょうか。当たった人が取りに来なかったとか?
とりあえず現物を確認すると「筒井康隆ショートストーリー」として「最初の混線」が見開きでイラストとともに掲載されていました。
星さんの初出リストでは星さんの作品は1971年4〜6月号に掲載。筒井さんの作品がその前の1〜3月号に掲載されていた可能性は充分にあります。『発作的作品群』収録で、平石さん調査による初出誌不明は「最初の混線」を除いて3篇、「客」「遠泳」「差別」でした。
こうなると調査に出かけないわけには行きません。が、掛川に行くとなると結構な運賃がかかることがわかり、青春18きっぷの有効期間、3月に入ってから行くことに(資料館には事前に「資生堂ホールセーラー」1971年度近辺を閲覧したいことを連絡)。
で、ようやく最初の行に戻ります。当日朝6時半頃発って、東海道線を乗り換えながら掛川に到着したのは11時半過ぎ。1時間に1本の市内循環バスに乗って12時40分頃、資生堂企業資料館に到着しました。
なだらかな坂を上っていくと、こんな看板が。
「『人間狩り』?」と思いながらも無事到着。
受付で来意を伝えると、担当の方が会議室に案内して下さいました。部屋には既に「資生堂ホールセーラー」の1965〜1975年分があり、お茶まで出していただいて恐縮しきり。
ここに来た理由を改めて説明、注意事項が書かれた誓約書に署名して、資料を調べさせていただきました(筒井康隆さんのことで来館した人は初めてだそうです)。結果、「資生堂ホールセーラー」には筒井さんは3篇掲載。詳細は以下になります。
- 「最初の混線」資生堂ホールセーラー 86号 1971.1発行 P18-19 イラスト 丸山柏郎 2点
- 「遠泳」資生堂ホールセーラー 87号 1971.2発行 P18-19 イラスト 丸山柏郎 1点
- 「差別(1人称)」資生堂ホールセーラー 88号 1971.3発行 P18-19 イラスト 丸山柏郎 1点
また同誌には1971,1972年の二年間「ショートストーリー」が連載。筒井さんの後は以下の通りでした。その作家を研究している方の一助になるかとも思いますので記しておきます。
- 星新一「ことのおこり」1971.4「三段式」1971.5「しあわせなやつ」1971.6(公式サイト初出リストに既出)
- 多岐川恭「顧問」1971.7「右か左か」1971.8「取り替え」1971.9
- 都筑道夫「混乱状態」1971.10「魔力」1971.11「遺産」1971.12
- 樹下太郎「テロップ」「白と黒」「パステルの雲」「土曜の夜」1972.1〜4
- 豊田有恒「正義の味方」「ファッション音痴」「願いごと」「海」「二百十日」「スポーツシーズン」「報告」「街にサンタが来なくなる」1972.5〜12
「資生堂ホールセーラー」以外にも気になっていた「花椿」「資生堂チェインストア」も出していただき調査しました。時間の都合もあり詳細に調べられませんでしたが、SF関連は以下の通りです。
調査を終えたのは4時近く。何度も収蔵場所と会議室を往復して資料を出してくださった担当の方には感謝の言葉しかありません。本当にありがとうございました。
土産に夜のお菓子・うなぎパイを買って、同じ鈍行で十時頃帰着。平石さんにも喜んでいただきました。腰はちょっと痛くなりましたが、ショートショート3篇の初出が判明。行った甲斐がありました。
以上、報告いたします。長文失礼いたしました。