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筒井康隆コレクション III 欠陥大百科』発刊記念 筒井康隆自作を語る#2「『欠陥大百科』『発作的作品群』の時代」

 後半は作品ごとにということで、コレクション4巻収録の2作品から。
 『男たちのかいた絵』(1974)について。ジャズのスタンドナンバーをタイトルに、ヤクザが主人公、異常な性格・性癖、男性しか出て来ないなど自分で制約を課した。豊川悦司主演の映画は二篇のエピソードを合わせているが、二重人格で別の人格に変わる時のトヨエツの演技が素晴しかった。徳間書店が映画のノベライズを依頼してきたが、断筆中であり、花田秀次郎という「昭和残侠伝」シリーズの主人公の名で書いた。ビデオを止めながら繰り返し観て、忠実に書くとともに、筒井康隆の色が出ないようにした。生島次郎のアンソロジー『男の小道具 飛び道具』(集英社文庫)には「夜も昼も」が収録されているが、生島氏は「夜も昼も」の内容が「これこそ男の飛び道具」と言って喜んで採用した。
 『おれの血は他人の血』(1974)について。SFのスタイルでハードボイルドを書いた、ハメット「血の収穫」へのオマージュ。平凡出版「PocketパンチOh!」連載で担当は能見正比古氏。血液型人間学の彼はこれを読んでどう感じただろう。舛田利雄監督、火野正平主演で自作初の映画化となったが、正直……。単行本帯には植草甚一氏の推薦文があるが、発刊前に「問題小説」に掲載されたものの抜粋(コレクション4巻に全文収録の予定)。
 『大いなる助走』(1977連載開始)について。別冊文藝春秋の編集の田嵜氏に何度も長篇を連載して欲しいと依頼され、文藝春秋の雑誌でなければ書けないものにしようとした。結末が予想できないよう、序盤は同人誌中心に展開したが、連載が進むにつれ、かなりの反響があり騒動となった。映画化の際には実際の編集者も招いてSF作家役をやり、怒ってビール瓶を投げつけるという場面を演じた。
 『富豪刑事』(1975連載開始)について。トリックについては1話と4話は出来ていたものの間の2・3話は苦労した。金を効果的にどう使うかにも工夫を凝らした。映画化の話もあったが、別でエピソードを執筆して欲しいといった要望があったり、台本を事前に見せてくれなかったことなども手伝って断った。のちにTVドラマになったが、これはホリプロの先輩にあたる深キョンが主演なので……。
 終りに日下さんから「コレクション」4巻は編集中、12月か来年1月あたりにはという話と、イベントは奇数巻が出たタイミングを考えているので次回は5巻発売の頃、『虚人たち』のあたりからですとのお知らせがありました。
 そして筒井さんからは最新長篇「モナドの領域」掲載の「新潮」10月号は増刷したが不足気味でモナド難民が発生中なので急遽12/1発売で単行本化することになったとのサプライズ発表が(装幀は伸輔さん)。会場が大きく沸きました。
 颯爽と手を挙げ、大きな拍手に応えて会場をあとにする筒井さん。かっこ良かったです。
 前回同様、濃密で愉しい時間でした。筒井さん、日下さん、Live Wireの皆さん、出版芸術社の皆さん、ありがとうございました。