筒井康隆氏についての…

筒井康隆さんについての情報を中心としたブログです

筒井康隆コレクション V フェミニズム殺人事件』発刊記念 筒井康隆自作を語る#3「『虚人たち』『虚航船団』の時代」

 「煙草を一服」の休憩をはさんで後半。
 『美藝公』について。
 「GORO」連載。古き良き時代のことを書こうと考えた。架空映画のポスターを大判で描くとなれば横尾忠則氏しかいなかった。現実世界と交錯する後半部分は挿画無で文章のみの構成。横尾氏と二人でサイン会を複数回行った。『不良少年の映画史』の執筆のため、「週刊新潮」の掲示板コーナーで戦前の映画雑誌について訊ねたところ、「キネマ旬報」のほぼ揃いの申し出があり購入。戦後のものも神保町の矢口書店で入手した。あの頃の映画はB級映画と呼ばれているものでも面白いものが沢山あった。
 とここで次回の『コレクション』6巻『美藝公』収録の際には横尾氏のイラストを全点収載しますという日下さんのコメントがあり会場より拍手が。
 『筒井康隆全集』について。
 これまで多くを書いてきたが、今後どれだけ書けるかわからないという状況で、新潮社より話があり全集を纏めた。新潮社の全集のなかでも破格の売上だった。特典として『最悪の接触』複製原稿やLPレコード、プレゼントとして色紙などを付けた。各巻には熱心な読者が探してくれた未収録作品も収めている。
 『虚航船団』について。
 新潮社、純文学書き下ろし特別作品の一冊として刊行。一千枚、二年がかりで完成。毀誉褒貶激しく、毀誉のほうが多かったが、小松さんは褒めてくれて、映画化したいから映画権を寄越せと手を出されて困った。評判が良くないという話を聞いて、星さんが長い作品評を書いてくれて有り難かった(「野性時代1984年9月号「『虚航船団』私論」)。
 『虚航船団』は近年好評で、文庫も増刷している。「萌え絵で読む虚航船団」というものもある(糊がお気に入り)。『虚人たち』もそうだが、発表当時、受け入れられることが少なかった作品がここになって支持されている。
 84年、日本SF作家クラブ会長に就任。事務局長の豊田有恒氏がよくやってくれた。初代・事務局長の大伴昌司氏もよく動いて、あの原子力発電所見学や出雲大社詣でも彼あってこそ。
 『イリヤ・ムウロメツ』について。
 手塚治虫さんにイラストを描いてもらい単行本化。当時の手塚プロには連載原稿を待つ漫画雑誌編集者が詰めていて、講談社の単行本担当編集者という立場では画稿をもらうのはなかなか厳しく、連載終了後から単行本までは時間がかかった。もともと『イリヤ・ムウロメツ』はナカムラ漫画で出ていた謝花凡太郎の『勇者イリヤ』から。モノクロのコピーを当時読んだが、手塚さんからの提供だったかも知れない。
 『旅のラゴス』について。
 「SFアドベンチャー」の菅原氏より短篇を依頼されていて、『虚航船団』脱稿後に執筆した「集団転移」が最初。その後、次のエピソードが浮かび、連作長篇『旅のラゴス』とした。「集団転移」は独立した作品として書いたので、やや大人しい文体となっているが、その文体をラストまで継続した。
 『朝のガスパール』について。
 真鍋博さんは新聞連載は初めてで、登場人物についてモデルをその都度知らせた(山口智子だったり谷啓だったり)。真鍋さんはそっくりに描いてきて困ったこともあった。
 『コレクション』7巻『朝のガスパール』には真鍋博さんのイラストを全て収録しますと日下さんがコメント。会場から歓声がわきました。
 『フェミニズム殺人事件』について
 作品中、婦人雑誌に連載中の「パプリカ」という作品がありますが…という日下さんの問いに、「マリ・クレール」からそういう連載依頼が既にあったのかも知れないとのことでした。
 終りに日下さんより『コレクション』と並行して『筒井康隆全戯曲』も刊行されること。またこのコレクションイベント、次回は7巻刊行時になりますとお知らせがありました。
 手をあげて拍手に応え会場をあとにする筒井さん。いつも愉しい時間をありがとうございます。次回も楽しみにしています。
 日下さん、Live Wireの方々、出版芸術社の皆さん、ありがとうございました。