筒井康隆氏についての…

筒井康隆さんについての情報を中心としたブログです

文学インタヴュー第7回 筒井康隆 (〈現代作家アーカイブ〉by飯田橋文学会)

 レポその2です。「・」が都甲さん部分です。
・「ペニスに命中」について。老人が大暴れする、気持ちのいい作品。
 ドタバタを書いていた頃、「読んだ後には何も残らない」と言われ認めてもらえなかった。それでも書き続けていると「まだやっている。もしかしてトロいのでは」と揶揄された。そして実験的な試みをして文学賞を受賞すると逆に「昔のほうが良かった」と言われたりもした。30年ほど前、東大に招かれインタビューを受けた時には「最近パワーが落ちているのではないか」という質問があったりもした。実際ドタバタを書くには体力が必要。
「ペニスに命中」は最初からハイテンションで最後まで書けるか不安だったが何とか書き上げた。笠智衆の声色の場面など役者をやっていたから書けた。
・「ペニスに命中」は時間的なずれなどメタフィクションな部分もある。
 最後のドタバタと思ってあらゆることをぶちこんだ。主人公の老人にはマルクス兄弟三人が入っている。グルーチョが面白いことをやり、ハーポがシュール、チコがずるいことをする。
・車の中から銃を撃つ場面が痛快。
 この作品はタイトルをどうつけようか悩んでいて「ペニスに命中」という内容とは関係ないものに決めた(後半部で近い場面はある)。他にもムロジェクの作品を読んでその感動で書いたもの「ムロジェクに感謝」と付けたことがある。読者にはわからないだろうが、それはそれでいいと感じでいる。
 ここで10分の休憩。続いて質疑応答になりました。
「好きな作家と嫌いな作家を教えてください」
 私は純文学の谷崎潤一郎賞、エンタメ系の山田風太郎賞の選考委員をしているが、最近は純文学系は実験に拘るあまりやや袋小路に来ている感じがする。エンタメ系はパワーがありヨーロッパの古典作品の雰囲気に近い。ラノベにも「涼宮ハルヒ」シリーズ含めいいものが沢山ある。また村上春樹だが純文学にファンタジーを持ち込んだ功績は大きい。
 好きな作品は多くあるが、最近のものから一作挙げるとするなら川上弘美『大きな鳥にさらわれないよう』。
 嫌いな作家というよりもどんな作品にもいい表現、いい箇所はある。
「『七瀬ふたたび』『おれの血は他人の血』など登場人物が次々と死んでいく展開について」
 悲しい時には誰もが泣く。そのときまだ自分にも人間の心が残っていると思える自分を面白いと感じる、二重三重の思考となる。
 とここで、筒井さんが「長時間喫っていないので頭がまわらない。ほんの少しですから」と煙草を取り出し一服。会場からはどよめき(と喝采)。筒井さんは何度か紫煙をくゆらせたあと携帯灰皿におさめ、質疑応答を再開。
「喜劇や笑いに社会批判の力はあるか」
 政治家など真正面から批判されるより笑いを交えて揶揄されるほうが怒るもの。以前タモリベルグソンの笑いについて対談した(「笑いは笑いの法則を破壊する」<中央公論>1982・6)ことがあるが、現在はバナナの皮で転んでも誰も笑わない。小説を読んでいる際に笑った時、その笑いにはどんな意味があるのか、その前後の意図を考えることでわかるのでは。
 以上で質疑応答は終了。筒井さんは「サンキュー」と手を挙げて会場を後にされました。
 筒井さん、都甲さん、飯田文学会をはじめとするスタッフの皆さん、楽しい時間をありがとうございました。