「『筒井康隆全戯曲』全4巻完結記念トークショー」
- 2017.3.26 14:00〜15:00 八重洲ブックセンター本店
- 聞き手/日下三蔵
行ってきました、八重洲ブックセンター。1Fで『筒井康隆全戯曲』4巻と整理券を受け取って、地下でやっていた『ウルトラ怪獣アートワークス』パネル展をちょっと見てから、会場の8Fへ。アホウドリさんや卍さんと合流して列に並んでいると、係の人から整理券に書いてある番号が色紙プレゼントの抽選番号になりますとアナウンス。
何枚くらいですかねえ、10枚とかでしょうか。識語は何でしょう。「玄笑」かなあ。「一キロ二分」とか。ああ、それ欲しいなあ。などと会話しているうちに開場。
会場では「JCT」特製ポストカードに『全戯曲』関連の資料をいただきました。いつも同様メモをもとにざっとレポートします。
14時、筒井さん、日下さんがご登場。筒井さんは「悪天候のなかようこそ。ここに来てくださっている方は私のファンの核(コア)。感謝します」と挨拶されました。
最初に日下さんより『筒井康隆全戯曲』由来が。もともと『筒井康隆コレクション』で戯曲の巻を作ろうと思っていたが、コレクション自体巻数も多くなり別企画となった。以前、徳間書店より『大魔神』文庫化の話があり、そのままだと薄すぎるので何か追加出来るものはないかという相談を受けたとき『スーパージェッター』のシナリオを探したことがあって、加納一朗氏の元にあった筒井さんの手による二つのエピソードは入手出来ていた。今回、ちょうど徳間書店と復刊ドットコムが協力会社となったこともあって、復刊ドットコムから『筒井康隆全戯曲』全4巻が刊行となったとのこと。
続いて配布資料(筒井さんの映像化・舞台化などのリスト)をもとにトークショーがスタート。
・ラジオ「サイエンス・フィクション」について
小松左京さんと交代で書いた。ラジオ大阪の事務所の片隅で読み合わせなどをしていたが、ディレクターが知り合いで出演させていた(演技が上手くない)女性ではなく、きちんと演技の出来る役者に何度もダメ出しをする演出をしていたことを憶えている(そういうやり方もあった)。
・日本電波映画「SFモンスター作戦」について
NULLスタジオにいた頃に依頼があり「宇宙病針千本」「混合獣フラゴン」などのプロットを書いた。混合獣フラゴンはゴジラにラドンの羽根がついているというもの。結局シリーズ自体実現しなかった。フラゴンは後にジュブナイルとしても書いた。
・「スーパージェッター」について
SF作家・ミステリ作家が脚本を担当。上京したおりTBSでよく打ち合わせをした。「半重力ドリル」というのを書いた記憶があるが、リストアップされていない。著作権料はすぐには貰えなかったが、そのこともあり結婚し上京した。
・「会長夫人萬歳」について
「シナリオ新人」は名の通りシナリオ作家の新人を育てようとした同人誌。創刊号の巻頭に掲載されたのだから主宰側も認めてくれたのだと思う。創刊号にはカットも多く描いた。
・短篇を戯曲化した作品(「改札口」など)について
自分の短篇は一幕ものの戯曲に仕立てやすい。簀の会が連続上演してくれたときも短篇の科白をそのまま使ったりした。川和孝氏も原作に近い演出をしてくれる。
・「タイムトラベラー」について
「少年ドラマシリーズ」の最初の作品で、人気だった。芳山和子役の島田淳子は芸名を変えるので名付け親になってほしいと言われたが責任もあるのでお断りした(のちに浅野真弓と改名)。
・「芝生は緑」
九州RKB毎日放送制作の日曜劇場(1時間ドラマ)。既に多岐川裕美が『七瀬ふたたび』の撮影に入っていたため、七瀬役は多岐川さんにと推薦した。ラストシーンに出て欲しいという依頼もあったがお断りした。
・「部長刑事」
1100回、1300回記念で二本書いた。ミステリドラマとしてなかったものをやったつもりだが、スタッフにわかりづらいと言われ解説もさせられた。小松さんと鑑識役で出演したが、小松さんが遅刻してきたことを憶えている。
・「おれは裸だ」
明石家さんま主演。冒頭30分ほどが原作通りのドタバタで面白い。後半が筒井康隆らしいとするドラマ評があり呆れた。
・「世にも奇妙な物語」での作品について
山崎努主演の「自殺悲願」は原作に近くよく出来ていると思う。
・「幻想ミッドナイト『怪物たちの夜』」について
頭の後ろに眼がある千里眼を演じ、小林亜星と怪物コンビを組んで楽しかった。
・内田有紀版『時をかける少女』
本番前に丸刈りにして住職役で出演。その後「ソリトン野望馳参寺」でも住職をやったが、終り頃にはだいぶ髪が伸びていた。
・「富豪刑事」
映像化に際してはいろいろあったが(特に最初の映画化の話)以前にも話したので割愛。深田恭子版には出演。
・早川光「二人でお茶を」について
自主制作映画。ヤクザの親分役で出演。宿泊していたニューオータニで撮影。
・「俗物図鑑」
内藤誠監督による作家・評論家出演作品。ないと監督からは先日『偽文士日碌』を映画化したいという希望があったが、選考会や二次会など作家・編集者の許諾も必要なのでお断りした。
・原田知世版『時をかける少女』
撮影現場にも行ったが、時計をコマ撮りしていたりして、後に観た時ああいう映像になるのかと思った。エンディングに出てくれと言われたがお断りした。
・映画『スタア』
プロデュースをし、パンフレットも編集した。枚数の多い原稿が必要で「戯曲『スタア』上演法」を書いた。
・「怖がる人々」
和田誠監督で「乗越駅の刑罰」「五郎八航空」。どちらとも原作の科白に忠実。
・ドラマ化・映像化全般について
最初に聞かれると思っていたが、作家は自分の原作の映像化について満足することはない(たとえどんなに傑作であっても)。原作のエピソードを省かれたり、ギャグをわからないからといって飛ばされたりすることもある。原作は原作、映像化作品は別物という考え方。
・角川春樹版『時をかける少女』
長過ぎると感じる。
・『日本以外全部沈没』
監督自身が言っているようにB級に徹した作品。渋谷で『日本沈没』上映館の向かいで上映していて面白かった。そういえば今度『12人の浮かれる男』が『12人の怒れる男』とともに上演される。どこをどうパロディにしたか見てもらえるいい企画。
・『パプリカ』
『千年女優』を観て『パプリカ』をアニメ化できるのはこの人しかいないと思って、対談した際にこちらから今監督に依頼した。今監督と一緒にバーのマスターとバーテンを演じたのはいい想い出。
今度復刊ドットコムでDVDコレクターBOXにしか入っていなかった、『パプリカ』絵コンテを出版する話があるので楽しみにしていて欲しい。
・他舞台化された作品について
『筒井康隆全戯曲』に全部書いてあるので読んでください。
とここで筒井さんより、子供の頃、父親の嘉隆氏や親戚のかたから聞かされたという、大阪の戯れ歌を記録の意味も込めて歌いますと。思いもよらぬプレゼントに会場が沸きました。
筒井さんが歌われたのは四曲。
「お寺の屋根で」「西郷隆盛」「住吉浜辺の」「一かけ二かけ三かけて」
『暗黒世界のオデッセイ』収録「記憶の断片」や『狂気の沙汰も金次第」「猥歌」などで知っていた歌の数々。筒井さんが歌い終わるたびに大拍手が。「一かけ二かけ三かけて」は飼っていた猫を抱えて前足を持って膝の上で躍らせるという振り付きで感激しました。筒井さんの歌を聞いたのは「フリン伝習録」での「ヴィリアの歌」「ガラキのラップ」、「コント二題」朗読での「知床岬」に続いてでした。嬉しかったです。
最後に色紙の抽選があったのですが「煙草が切れてきているのでこれにて」と筒井さん。会場にいらしていた豊田有恒さんと奥さんに挨拶されたあと、手をあげて颯爽と会場をあとにされました。
プレゼントの色紙「玄笑」は幸運な10名の方に。
筒井さん、日下さん、復刊ドットコムの方々、八重洲ブックセンターのスタッフの方々、楽しい時間をありがとうございました。