『時をかける少女』(角川文庫 その3)
映画『時をかける少女』公開を間近に控えた1983年初夏、角川書店と富士写真フイルムは共同で「角川文庫ブック・カバー イメージ・フォトコンテスト」を開催します。「写真の日」イメージガールでもあった原田知世が髪型も趣も変えた様々な姿で「読・写しよう。」と呼びかける姿が誌面を飾り、チラシが写真店店頭に置かれました。
このコンテストは文字通り、公募した(作品をイメージした)写真作品から優秀作品を選び、角川文庫のブックカバーとして採用しようとするものでした。対象とされた作家は次の二十人。夏目漱石・芥川龍之介・太宰治・井上靖・吉行淳之介・渡辺淳一・つかこうへい・片岡義男・赤川次郎・星新一・筒井康隆・眉村卓・平井和正・大藪春彦・松本清張・森村誠一・夏樹静子・田辺聖子・宮沢賢治・中原中也。対象作家の角川文庫作品をイメージした作品の中から、優秀賞に選ばれた筒井作品は(やはり)『時をかける少女』をイメージした写真でした。
- 角川文庫イメージ・フォトコンテスト カバー
- 渦巻きと階段と原田知世(デザイン/市川信勝)
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- 43刷(1984.4.10発行)にかけられた。
- 帯(黄) 惹句 角川文庫・ノベルズ ヒット・バラエティ30 イメージ・フォト・コンテスト受賞カバー
- カバー背並びに裏は白
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これが、帯をかけると知世ちゃんが隠れてしまい(写真右参照)何が何だかわからなくなるとか、写真作品というよりコラージュじゃないかなどと言われながらも、筒井ファンには人気のある「市川版」カバーです。43刷のみにかけられたため買い逃したという人にも古本屋で見つけやすいつくり(背が白! 角川文庫の『時かけ』では唯一)になっているのが人気の理由のひとつかも知れません。
角川文庫版『時かけ』はこの「市川版」カバーののち、デザインは元の原田知世と桜(裏・白)に戻り、さらにマイナーチェンジを繰り返すことになりますが、その前にまたもうひとりの「時をかける少女」が現れることになります。
DVDが発売されても全く終わる気配を見せない『時かけ』ミニ特集、次回は「南野陽子版『時をかける少女』」です!