筒井康隆氏についての…

筒井康隆さんについての情報を中心としたブログです

筒井康隆コレクション』完結記念 筒井康隆自作を語る#4

 約10分の休憩後に後半スタート。
・『敵』(1998)
 純文学書下ろし特別作品として刊行。新潮社の矢野氏とエピソードの入れ替えなど相談した。老齢ということを考え始めた時期だった。
・『わたしのグランパ』(1999)
 新潮社の純文学書下ろし作品は必ず買うという読者がいた一種のブランドだったが、この頃は売上が厳しくなっていきていた。「わたしのグランパ」は「オール讀物」に掲載。映画化も早い段階で決まっていた。グランパには高倉健さんという話もあったが、結局菅原文太さんになり、文太さんだからこそユーモアも表現できて良かったと思う。ヒロインはホリプロタレントスカウトキャラバンで選んだ。選考会で喧嘩するときの怖い表情を演じてもらったが、石原さとみ(当時/石神国子)さんが一番で選出された。文太さんとは二三度お会いした。溺れる女の子をグランパが助ける場面のオーディションでは文太さんにしがみつくだけではなく足を絡めてきた子を選んだというエピソードもあった。
・『愛のひだりがわ』(2002)
 岩波書店の大塚社長(当時)の依頼で書いた。映像化の話もあったが、舞台が近未来で予算がかかりすぎたり、候補の女の子がすぐ大きくなってしまい実現しなかった。
・再編集の文庫短篇集(2002)
 日下/徳間文庫で全6巻の再編短篇集を編ませていただいた。同時期に新潮社からも何冊か刊行。
 オリジナルの短篇集が品切になっていた。殆どの作家はそのままになってしまうが、再編集の短篇集が出るのは有り難かった。
 日下/2006年には角川からも再編短篇集が出て未収録だった作品が収録。
 タイトルを聞けば内容は憶えているが、いつどんな雑誌に発表したかというのは失念してしまう。そういえば先日、松浦寿輝氏が好きな短篇を挙げたリストに「馬」という作品があり、どんな短篇だったかと一瞬考えた。最近はいろいろな方が自分の好きな作品を選んでくれているが、「おれに関する噂」や「佇むひと」などベストに入ってもよいと思う作品も入っていなかったりする。人によってそれぞれのベスト作品が異なるというのは有り難いが、代表作がこのままだと「時をかける少女」になるのでは。まあいいけど。
 日下/2010年には金の星社からジュヴナイルコレクション全5巻が出て、私が出版芸術社で編集した「細菌人間」まで収録されています。
・『銀齢の果て』(2006)
 老人ものの集大成。年齢のばらつき、様々なキャラのバランスが絶妙と評判だった。山藤章二氏がとげぬき地蔵で終日スケッチをして、キャラ全てを描いてくれた。映画化の話もありかなり進んだが役者が何人か亡くなったりして実現しなかった。ただ別の製作会社で映像化の話が再浮上している。
 日下/子役は大きくなるし、老人役は亡くなってしまう。
 製作期間を短くして撮影しないと駄目。
・『巨船ベラス・レトラス』(2007)
 『大いなる助走』以降、ある時期までの文壇を描いた。山田風太郎賞を受賞した『罪の声』の作者・塩田武士の新作『騙し絵の牙』はその後の文壇を描いて面白い。パチンコのことなど編集者に本当にあんな状況なのかと聞いたら本当だと言う。
・『ダンシング・ヴァニティ』(2008)
 「新潮」の原稿料はエンタメ系と同じで気の毒だった。原稿料を下げる代わりに楽して書いてやろうと考えた(コピー&ペーストを駆使)。清水良典・絲山秋子両氏は高く評価して賞までくれた。単行本は人形が三体並んでいるが実際は一体でこれもコピペ。
筒井康隆
 来年の秋、世田谷文学館筒井康隆展が開催予定。そこで神戸に残っているポスター類などを販売したい。
・『漂流』(2011)
 文庫化の話が進んでいる。ハイデガーで終わっているが、古典から最近の作品までとりあげている。
・『ビアンカ・オーバースタディ』(2012)
 「太田が悪い」が流行った。『涼宮ハルヒ』シリーズを読んでラノベを書いてやろうと考えた。
 日下/あとがきにタイトルだけ挙がっている続篇『ビアンカ・オーバーステップ』を実際に書いた方がいたが。
 本人(筒城灯士郎)にも会い、作品も読んだが、すごくて驚いた。どこに才能が眠っているかわからない。谷崎潤一郎賞山田風太郎賞の選考委員をしているが、最近はエンタメよりも純文学のほうが力のある作品が多いと感じている。
・『日本SF傑作選 1 筒井康隆 マグロマル/トラブル』』(2017)
 日下/初期短篇を中心に25篇を収録。「フル・ネルソン」や「デマ」も収録。
 SFファンは「フル・ネルソン」や「ビタミン」も受け入れてくれて星雲賞もくれた。
 日下/「デマ」や「上下左右」など当時は文庫に入れられない短篇もあった。
 「上下左右」は大きなケント紙を使って写植を貼りながら書いた。最後「SFマガジン」の今岡氏が丸めて持ち帰った。
・『モナドの領域』(2016)
 創造主たる、宗教上の神は描いていない。むしろ「神というものはない」ということを描こうとした。「最後の小説」としたのはこれでもう書くものがないなと感じたから。
 日下/『聖痕』発刊時のインタビュー記事を示して、この時も「最後の小説」とおっしゃっていますが…。
 そうか。「最後の小説」…、あと二、三回行けるな(会場大爆笑)。
・最近の短篇について
 先日91歳で短篇集を出版したというひとがいて羨ましかった。あと八年ほどあるのでゆっくり書いて一冊にまとめたい。
 日下/もっと早く読みたいです。
・『筒井康隆コレクション』(2014-2017)
 日下/品切になっている作品を復刊するとともに新規の読者だけでなく往年の筒井ファンにも喜んでもらえるよう未収録作品や付録にも力を入れて編集。三年をかけて無事完結できた。このトークイベントも奇数巻刊行のたびに開催して今回が最後となる、読者の皆さんと会場に来てくださった皆さんに感謝します。
 筒井さんは日下さんに感謝をされるとともに会場にも「ありがとう」と声をかけ、手をあげて拍手に応え会場をあとにされました。
 最後にLivewireの井田氏からは予定していた「新宿祭」は名称を変えて来年秋に開催を予定するとの発表があり、会場が沸きました。
 筒井さん、日下さん、出版芸術社の皆様、Livewireの皆様、楽しい時間をありがとうございました。