筒井康隆氏についての…

筒井康隆さんについての情報を中心としたブログです

「わたしの筒井康隆」2 レポート 1

筒井康隆トーク&オークションイベント「わたしの筒井康隆」2』(その1)

 世田谷文学館に着いたのは15時頃。展示換えとなった生原稿「弁天さま」の伏字部分が圧倒的で、しばし見惚れてしまいました。その後、関西時代の知人のかたと喫茶室で現況や筒井さんについて話している間に受付時間に。
 18時。筒井さんと中川翔子さんが拍手に迎えられて登壇。私はポケモン映画の初日舞台挨拶などで何度かしょこたんを見ていたりするのですが、落ち着いた雰囲気の大人の女性になったなあと溜息(でも喋りだすと変わらないんですが、そこがまた魅力的)。
 最初は筒井さんとしょこたんとの出会いから。『世界を変える100人の日本人!』のゲスト出演の際(2009.6)、楽屋で筒井さんが「わあ、しょこたんだ」と言ったら逃げ出したエピソード。しょこたんは「あの素晴らしい作品を生み出す、神である筒井先生の脳内にしょこたんという単語があって驚いて」と。2回目はいとうせいこうさんがやっていた「オトナの!」(2014.7)で、しょこたんが「忙しくていろんなことをする時間がない」と言ったら、「一番好きなことは何か」と筒井さんに聞かれ「猫です」と応えたら「では猫をすべて殺せばいい」と言われた逸話を披露。今日が3回目の顔合わせになります。
 ここでしょこたんから筒井さんとの縁について。しょこたんのお父さんの中川勝彦さんは南野陽子さん主演のテレビドラマ「時をかける少女」で深町一夫を演じていて、お父さんが亡くなった後、幼い頃からそれを見ていた。そして殻に閉じこもりがちだった中学生の頃に筒井さんの作品に出会って勇気付けられてきた…と。そして「ここで好きな筒井さんの作品を…」と「わたしの筒井康隆」を披露。「家族八景」での死の描写。「走る取的」の理不尽さと恐怖。「農協月へ行く」「死にかた」「寝る方法」(寝る前に読んで眠れなくなる)「断末魔酔狂地獄」「コレラ」「問題外科」…。内容を詳細に話し、場面場面を再現し、その素晴らしさを早口で語る、とても濃密な時間でした。
 しょこたんが監督をつとめた、映画『七瀬ふたたび』プロローグについて。筒井さんから演出の手法はどこで?ときかれたしょこたん。思い描いていたものを絵コンテにして持参。「よーいスタート」のタイミングさえわからなかった。
 「家族八景」での死の描写について。読んでいて、経験していないのに「死」とはこういうものではないかというイメージができた。ああいう表現はどうしたら出来るのかとずっと考えている。筒井さんは、菊地成孔さんとのラジオでも触れたが、「死」というものを子供の頃から面白がってもきたし、怖がってもきた。「死」は怖いものと。
 「生命が有限だからこそ、どう有効的に生きればいいのかと考えている」というしょこたん。筒井さんからは「好きなこと、楽しいと感じられることをやればいい。遊びと仕事が一緒ということもある」と。以前「オトナの!」で「妄想はやめなくてもいい」と筒井さんがおっしゃったときのように、嬉しそうなしょこたん
 美女がひどい目にあう作品(「農協月へ行く」「問題外科」…)もいっぱいありますが、筒井さんにとっての美女とはという問いには、誰もが見て美女と思うような一般的な美女ではなく、自分にとっての美女というイメージ。また女性がひどい目にあうという点については、発表当時はクレームなどはなかった。
 そして作品における笑いについて。自分でも何度も演じた「関節話法」や、白石加代子さんが「百物語」で演じてくれた「五郎八航空」は客が笑いすぎて席から転げ落ちるほどだった。人を笑わせることに一所懸命だったので、作品で笑ってくれるのはとても嬉しい。同じ笑わせ方(アイデア)ではダメなのでそこが難しくもあり、やりがいでもある。
 ここで筒井さんからしょこたん情報。久々のシングル「blue moon」が発売され、今日も新宿タワーレコードでイベントがある。この後、朗読する「馬」には女性の声が必要でお願いしようと思っていたのだが…という言葉に、しょこたんが感激して早口で朗読は是非次の機会にやりたいです。「農協月へ行く」の「そんなことしないで」とか言ってみたいし「死にかた」とか「寝る方法」とか、オールナイトでもやりたいです。是非次の機会に実現を…と。
 その後も創作の話、近未来について、好きな献立の話(朝は鮭、ベーコンエッグ、黄身だけの卵かけご飯など。お惣菜が好き。肉じゃが、豆腐に鰹節、縮緬雑魚の大根おろし添え等)、今後も短篇を書いて九十歳くらいで短篇集にまとめたい等々、何度かそろそろ…と世田谷文学館のかたが知らせようとするのですが、しょこたんトークは止まりませんでした。自分に演じて欲しい筒井作品を聞いたり、客席との交流も随所に入れ、その個性あふれる感性と表現に魅せられた、あっという間の一時間でした。面白かったー。
 大拍手に送られてしょこたんは退場。続いては「馬」の朗読です(続く)。