筒井康隆展 記念対談「筒井康隆を語る」レポート
筒井康隆展最終日前日でのイベント、記念対談「筒井康隆を語る」行ってきました。この模様は後日、藤田直哉氏による構成で「文學界」に掲載されるということですので、簡単にレポートします。
最初に世田谷文学館館長・菅野昭正さんよりおふたりのご紹介があり、拍手とともに筒井さん、松浦さんがご登場。客席には細田守監督の姿も。
松浦さんから今回の展示について。生涯を辿る詳細な年譜と膨大な作品群が展示されていて楽しい。筒井さんは一つのジャンルにとどまることなくありとあらゆることをやってこられた。壁面に並ぶ著作を見ると圧倒的。どのような感想を持たれますかと。
筒井さんは「まずあの壁面の本はどうやってくっつけたのか」と、見た人誰もが思う疑問で場をわかせ、この展示は乃村工藝社に在籍していた自分の眼から見ても、非常に丁寧につくられたもので感謝している。冊数が多いと言われたが、ほぼ50〜60年近く書き続けてきた結果。ただ小説だけではなくエッセイ集や戯曲集も出してもらって幸福な作家だったと。
ここから話は創作のことに。「同じことはやらない」という創作姿勢については「読者からも同じことをしているとの指摘があり、文体・描写などを変えて書いてきた」と。作品を創る基礎としては「バベルの図書館」的な考え方。今まで読んできた書籍、聞いてきた音楽(フリージャズも)、観てきた映画(喜劇、プログラムピクチャー)があった。
狂気的な作品が多い反面、筒井さん自身は常識的な紳士で驚かれる方もいると思うがということについては、作品と実際、どちらが本当かと問われればどちらも演技。小説家・文士を演じてきた。
その後も、社会への怒りを笑いに変え面白い作品へと昇華させようとする姿勢、「朝のガスパール」では投書や提案に罵声を浴びせる登場人物が出てきているが怒っている自分を面白く書こうとしている、読者をとても大切にしている一方での「読者罵倒」という作品のこと、小説を書き始めた頃は注文は無かったが小説を書くということが楽しくてひたすら書いてきた、そしてこれを読んだら笑うだろう驚くだろうと思って書き続けているので苦しいとか辛いと思ったことはない、松浦さんから提示された「筒井さんは自分にとっての理想郷を描いているのでは」という仮説、民主主義は嫌いだがいいところも有りまたそれに代わるものがないという「蒙霧升降」のこと、死は怖いと意識すること、「SAPIO」に書く「不良老人の美学」のこと、人類の滅亡は早ければ70〜80年後ではないかということ、ニュースが一番面白いこと…等々、深く愉しい時間があっという間に過ぎていきました(詳細は「文學界」で!)
最後に松浦さんより「次の長篇を私も読者も熱望している」という話があり、筒井さんからは『モナドの領域』を書いてあれ以上のテーマはないと考えているので難しいが、様々な方やファンからは「次の長篇は」という希望を何度も聞いている。例えば読者から「このような作品を読みたいです」といったアイデアが出てくれば、書くかも知れませんという発言があり、会場が歓喜の拍手に包まれました。
拍手に送られて会場を後にする筒井さんと松浦さん。菊地さんとのトークショーはその後すぐのラジオ出演に、しょこたんとのトークショーは未来の朗読イベントに、そして今回の松浦さんとの対談は「次の長篇」に、とどれもがつながっていく素晴らしいイベントでした。
筒井さん、出演者の皆さん、世田谷文学館の皆さん、参加された皆さん、ありがとうございました。とても楽しく心に残るイベントでした。
筒井康隆展は十二月九日で閉幕しましたが、もう少しだけ書けなかったことなどを年内くらいにまとめたいと思います。