筒井康隆氏についての…

筒井康隆さんについての情報を中心としたブログです

佐々木敦 × 筒井康隆 トークイベント「メタフィクションの極意と掟、そしてパラフィクションの誕生?」

 行ってきました、青山ブックセンター本店。渋谷から歩いて10分ほど、辿り着いたのは13時10分。既に行列が出来ていました。
 13:30開場。整理券を貰って会場内へ。奥には翻訳本を中心とした筒井さんの署名本販売コーナー。『銀齢の果て』チェコ版や『文学部唯野教授』独版などに加えて、私家版『TWO SHORT STORIES』も。あっという間に売れて行きました。皆さん、眼が肥えてる!
 会場前には最新刊『繁栄の昭和』に『創作の極意と掟』の署名本も。これもどんどん売れて行きます。
 定刻の14時、慶応大学出版会の村上さんの紹介で佐々木敦さん、続いて筒井さんがご登場。手を挙げて拍手に応える姿が素敵です。
 佐々木さんは「この『あなたは今、この文章を読んでいる。 パラフィクションの誕生』の元となった「SFマガジン」連載「パラフィクション論序説」は筒井さんの『虚人たち』への論考から始まっていて、刊行を機にダメ元で対話をお願いしたところ引き受けていただいた」と、このイベントについて説明。応えて筒井さんは「この青山ブックセンターは自宅からすぐなので…」とおっしゃいながら(会場笑)も『あなたは今、この文章を読んでいる。』とともに詳細なメモを取り出し、対話が始まりました。以下、不充分ですがメモから抜粋します。
 『虚人たち』執筆の背景。
虚構内存在を自覚している登場人物を描くこと、また小説の制約(行為や時間経過の省略)への疑問から『虚人たち』は生まれた。結局は作者の創造物であるという、自明の理のような批評が発表当時からあった。また実験的な作品であったが、筒井康隆の小説ということで「売れた」ことは意味あること(読まれなければ作品はそこにあるだけ=読者の存在の必要性。資本主義的な意味合い)。実験的なものと楽しませようとすることは相反するが、読者を驚かせたいという思いがあった。映画や演劇の影響も多くある。
コルタサルの「続いている公園」やブラウンの「後ろを見るな」から読者に対する仕掛けも意識した。朝日新聞に連載した『朝のガスパール』では読者の反応が直にわかるパソコン通信を活用、数百名が参加したが、今で言う「炎上」状態になったり、集合的無意識にとらわれ心を壊してしまった読者もいた(のちの『パプリカ』でも)。読者を虚構に参加させることには注意が必要だと感じた。
 メタフィクションから読者の存在を意識するパラフィクションへ。
 辻原登氏の「遊動亭円木」(最近、筒井さんが好きな谷崎賞作品として挙げられた)は登場人物がこれがフィクションであることを読者に告げる場面が自然にある。また最近は円城塔舞城王太郎、亡くなった伊藤計劃各氏をはじめとして優れたメタフィクションが多く生まれている。
 とここで、筒井さんが立ち上がり、佐々木さんと会話しながら、ホワイトボードにマリー=ロール・ライアンのメタフィクション論の解読図を描き、後半はその図を中心に展開。AW(Actual World 実際の世界)での作者(AS0)からTAW(Textual Actual World テクスト上の実際の世界)とそれを内包するTRW(Textual Referential World テクストの指示する世界)。その中の作者(AS1)、読者(IS)の関係が板書され(Twitterで検索していただくと実際の写真がいくつか出てきます)、 お二人の対話でフィクションにおける作者と読者が解かれて行きます。さらにはゲーム的リアリズムのこと(いくらやり直し出来るからといっても感情移入しているキャラクターの「死」は読者(=Player)にとって衝撃である)。ゲーム内には選択肢があり、やり直しが出来るが、一度に選択肢は全て選べない。一つしか選べない(=人生のようなもの)、それが東浩紀氏の世界観に結びついているのでは(佐々木さんによる解釈)。さらには円城塔氏の作者としての位置(実世界AWと虚構世界TRWどちらにも存在?)。ジャック・リヴェット監督による映画「セリーヌとジュリーは舟でゆく」について。『繁栄の昭和』収録の「メタノワール」のこと等々…。
 最後に筒井さんが『あなたは今、この文章を読んでいる。 パラフィクションの誕生』には非常に刺戟を受けた。今後、読者を意識してパラフィクションの作品を書いてみたいと宣言(短篇、時間をかけて長篇にも)、大拍手で終了となりました。
 …すみません。うまくまとめられませんでした…。
 佐々木さんの『あなたは今、この文章を読んでいる。 パラフィクションの誕生』をしっかり読んで復習したいと思います。筒井さん、佐々木さん、青山ブックセンター慶応義塾大学出版会ほかイベントに携わった方々、脳内が熱くなる時間をありがとうございました。