筒井康隆氏についての…

筒井康隆さんについての情報を中心としたブログです

日本ペンクラブ・言論表現委員会 シンポジウム 現代における作家とは何か−売れなければ作家じゃないのか?−」

行ってきました、シンポジウム。入口でタクシーからおりてこられたばかりの筒井さんとお会いするという幸運があり、夢心地のまま会場へ。篠田氏による今回の趣旨説明、急遽出演が決まったという溝口氏の、言論に対する暴力への批判と訴えに続いて、シンポジウム「現代における作家とは何か」が開始されました。「出版をめぐる現状について一言」という問いに筒井さんは『売れさえすれば作家か』と「気の狂ったようなタイトル(売れなければ作家じゃないのか?)」への強烈な逆落とし。しびれました。
筒井さんはご自身の作家になった経緯(江戸川乱歩に認められて<宝石>に作品が載ってからも最初の本が出るまでは時間がかかった。その後も厳しい生活が続き、ようやく「スーパー・ジェッター」の権料で東京に出てくることが出来た)を話されたあと、新人賞の現状(賞を取ったはいいが蓄積がないため段々作品が書けなくなってしまう。作家として合格できない=ホラー浪人)に触れ、自分は「本しか娯楽のない時代」に生き、読む本がなくなるほど本を読んで、そして「自分が読みたい本」を書くようになった。それは(それまでにない)「新しい小説」であり、そうでなければ書き続けることなど出来ないと述べられました。
出版界を「格差業界」と表現する藤原氏、金か文学かで揺れる心情を吐露する西垣氏、決して出版社は金儲けに走っているわけではないとする石井氏、各氏それぞれの思いから、シンポジウムはやや錯綜、喫煙タイムをはさみながら、作家として活動していくことへのリスクが話題となります。
筒井さんは車谷長吉氏が谷崎賞の候補になりながらも受賞を逸し選考委員の一人である丸谷才一氏に「文学賞とは何ですか」と詰め寄った際のエピソードを紹介、丸谷氏の「文学賞は運です」という答えから「才能があるだけでは作家として花が開くわけではない。才能がありながら消えていってしまった人たちのことを考えればリスクの問題はもういいのでは」とし、さらに「私は小説にのめりつづけてきたため自分自身の生活をした記憶がない。自分の時間は何処に行ったのだろう」という問いに対する井上ひさし氏の「その時間は読者の中に生きています」という名答を示されました(「作家とは何か」というテーマに最も近づいた時ではなかったかと思います)。
休憩後は質疑応答。図書館司書の方に対して「(ロブ・グリエなどを読むよりもずっとわかりやすい)エンターテインメントとして楽しめる古典文学を大切にして欲しい」という言葉が胸を打ちました。

終了まで3時間弱、素敵なひとときを過ごさせていただきました。本当にありがとうございました。
(簡単なメモと記憶で書いたためあやふやな部分があります。すみません)