筒井康隆氏についての…

筒井康隆さんについての情報を中心としたブログです

筒井伸輔展とホシヅルパーティ2007

昨日、行ってきました。午前中早めに出てまずは筒井伸輔展へ。しっとりとした蜜蝋でかたちづくられた作品を静かな空間でひたすら眺めていました。私は蝶が好きで学生の頃、改訂版の出た『原色日本蝶類図鑑』(白水隆/監修 川副昭人・若林守男/共著 保育社)をいつも抱えるようにして読んでいたものですから(横山光夫氏による原版もその図鑑をはるかに越えた文学的な説明が大好きでしたが)、伸輔さんの作品を見ると、その図鑑の特色の一つであった一種一種克明に描かれた生殖器をどうしても思い出し、懐かしさと厳しさと、そして命を見つめるあたたかな眼を感じるのでした。奥の小部屋ではウラギンシジミ(あるいはムラサキツバメ?)のスケッチを見つめながら、彼らの(成虫で)越冬する、寒さに耐えるその凛とした姿を想起したりしていました。伸輔さん、素晴らしいひとときをありがとうございました。
神保町の三省堂へ着いたのは1時40分頃。「ホシヅルパーティ2007」は4Fの奥、イベントスペースで行われていました。新井素子夢枕獏の両氏によるトークは後半のみ聞けました。夢枕氏は星さんのショートショートコンテストに触れたあと、自分は筒井さんに「カエルの死」を認めてもらい、柴野拓美さんにも<奇想天外>に作品を推薦してもらった。そろそろ自分でも若い人を育てていかなければという思いがある…と。新井氏は星さんは「恩人」であり、特別な存在。決して表立つことなく、それでいて様々な場所で支えていただいたと感謝され、それを受けて夢枕氏が「足なが星さん」だねと。本当にそうなんですよと大きく頷いておられました。
50ほどの座席は満員。書棚の間のスペースにも人人人…。幕間には「ホシヅルの日」に上映されたフィルムが流され(日本SF作家クラブ原子力発電所見学の映像はここでも使われていた! そうか、この間のNHK、どこかで見たことがあると思ったんだ)、筒井さんが星さんのエピソードを語られる場面もしっかり見ました(筒井さんはセックスを扱った唯一の作品「解放の時代」のことなど語ってらっしゃいます。山下さんもこのフィルムにはご出演。タモリと星さんの不思議な関係について話されてます)。久美沙織・Nadia Gifford両氏による星さんの作品朗読(「おーい でてこーい」にはしりあがり寿氏による、これまた「ホシヅルの日」に流された紙芝居が。英文翻訳は星マリナ氏によるものでした)、さらに3時過ぎからはサプライズゲストとして、井上雅彦氏をはじめとする、ショートショートコンテストの受賞者たち。太田忠司平山夢明、斉藤肇、矢崎存美…などなどの諸氏が所狭しとステージへ。井上氏は自ら編集する「異形コレクション」の1巻目を手にしたその10日後に星氏が亡くなり、ようやく10年目にショートショートのみを集めた一冊『ひとにぎりの異形』(光文社文庫 12/6発売 80名を越える執筆者によるショートショート集成!)を出すことが出来た。そしてこの一冊で収録作品数が1001編を越えたと感慨深げでした。江坂遊氏からは来年講談社からショートショート集の新刊刊行予定という嬉しいニュースも。「なんだかお客さんよりも作家が多いんじゃないか…」と井上氏はおっしゃってましたが、時間を追うごとに人は増える一方で、サプライズゲストがこれだけ多い(高井信森下一仁両氏も後半登壇)というのはそれだけ星さんが慕われている証だと思いました(なお新井素子氏は自分の出番のないときでもずっと会場におられました。星さんに対する敬愛の心があふれていました)。
よんどころない事情で、私はここで会場を後に。パネル展示をざっと眺めたあと、店頭で募集されていた「星新一MY BEST ショート☆ショート」にさんざ迷った挙げ句、「古風な愛」に一票を投じて(最後まで「処刑」と迷った)、あたたかい気持ちで帰路につきました。とてもいい一日でした。